そうか!腹が減ったか!承知した。
生来(と、いってもまだ14年しか生きていないのだが)
米好きな息子の食欲を満たすために、いくつの握り飯を作ってきただろう。
マシュマロサイズのふざけたような小ささの握り飯を小皿に並べていた幼児期。
少々体調が悪い日でも、塩結びだけは口にした。
試合に出かける朝には3合の握り飯を持たせて送り出していたのに。
いつの間にか君は、運動不足の身体が肥えていくことを気にするあまり、大好きな米を摂取することを意識的に控えるようになってしまった。
母=Kafuuが茶碗にふっくらと炊き立ての飯を盛っても君は、その半分ほどをあっさりと釜に戻してしまう。
米だけではなく、テーブルに並べたおかずの類も積極的には口にしない。作り甲斐がない。「おかわり」の声は、「いってきます」以上に聞いてみたい。
いつの間にか献立もおざなりになり、どうせ食べないのだからと炊飯する機会も低下した。
しかし今日は違った。
「たまにはラーメン食べに行こうよ」、と誘う母=Kafuuの言葉に君は嚙みついたね!
「米だよ!米!米!今晩は米だ!母ちゃん。腹減ってんだよ…」
そうか!そうなのか!今日は腹が減ったのかっ!
すかさず、いつもよりやや濃いめに味付けした手羽元の甘酢煮を作り、炊き立ての飯をふっくらと盛った茶碗を添えた。
果たして!
テーブルにはきちんと空になった皿と茶碗が残された。
食後、いつもよりも多めに腹筋をする君を、うたた寝するフリをして盗み見ていた。
そして気付いた。何かが変わり始めていることを…。